慢性呼吸器疾患(CRD)とは

成人喘息のファクト

診断の手引き

 典型的な発作を繰り返す患者では、診断は困難ではない。しかし、発症初期で症状に喘鳴や呼吸困難を認めない軽度な状態では診断に苦慮することが少なくない。診断の遅れは治療・管理の遅れの原因となり、喘息の慢性化、重症化の原因となる可能性がある。

 喘息は繰り返す喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼー)、咳、呼吸困難の症状が特徴である。特に夜間、早朝に悪化する。成人喘息(特に40歳以上)では、COPDや心不全の合併を念頭におく。診断の目安を下図に示した。

 気管支拡張剤や吸入ステロイドなどの治療で症状が改善した経験があれば、喘息の診断はより確かである。

表2 成人喘息での診断の目安
  1. 発作性の呼吸困難、喘鳴、咳(夜間、早朝に出現しやすい)の反復
  2. 可逆性気流制限:自然に、あるいは治療により寛解する。PEF値の日内変動20%以上、β2刺激薬吸入により1秒量が12%以上増加かつ絶対量で200mL以上増加
  3. 気道過敏性の亢進:アセチルコリン、ヒスタミン、メサコリンに対する気道収縮反応の亢進
  4. アトピー素因:環境アレルゲンに対するIgE抗体の存在
  5. 気道炎症の存在:喀痰、末梢血中の好酸球数の増加、ECP高値、クレオラ体の証明、呼気中NO濃度上昇
  6. 鑑別診断疾患の除外:症状が他の心肺症患によらない
●主な鑑別診断
  • COPD(慢性閉塞性肺疾患、かつて肺気腫、慢性気管支炎と呼ばれたもの)
    40歳以上の男性にみられ、喘息と異なって安静時は何もないが、歩くと息切れをするのが特徴。1秒率FEV1/FVCが70%以下はCOPDの可能性が高い。
  • うっ血性心不全:狭心症、心筋梗塞などにより突然の呼吸困難、胸部不快を訴える。
  • 過呼吸症候群:Air Hunger 空気飢餓感を主な訴えとする。呼吸飢餓感が強いが、喘鳴を聴かず、肺機能は正常である。
  • その他、喘鳴、咳、呼吸困難など症状があるが、喘息治療に反応しないときは専門医に紹介する。
表1-2 鑑別すべき疾患
  1. 上気道疾患:喉頭炎、vocal cord dysfunction(VCD)
  2. 中枢気道疾患:気管内腫瘍、気道異物、気管軟化症、気管支結核、サルコイドーシス
  3. 気管支〜肺胞領域の疾患:COPD、びまん性汎細気管支炎、肺線維症、過敏性肺炎
  4. 循環器疾患:うつ血性心不全、肺血栓塞栓症
  5. アンジオテンシン変換酵素阻害薬などの薬物による咳
  6. その他の原因:自然気胸、迷走神経刺激症状、過換気症候群、心因性咳嗽
  7. アレルギー性呼吸器疾患:アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、アレルギー性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss症候群)、好酸球性肺炎